江戸時代の地方貨幣の中でも、その特殊性と希少性から注目されている「甲州朱中金(こうしゅうしゅちゅうきん)」。
山梨県(旧・甲斐国)で発行された地方独自の金貨であり、現存数が非常に少なく、コレクター市場では高額取引の対象となっています。

本記事では、甲州朱中金の歴史、価値、素材、形状、そして見分け方まで詳しく解説します。
目次
甲州朱中金とは?概要と背景
甲州朱中金は、江戸時代後期に甲斐国(現在の山梨県)で鋳造された地方貨幣の一種で、「朱金」や「朱中金」とも呼ばれています。
その名の通り、「一朱金」と「二朱金」の中間的価値を持つとされ、非常に限られた地域と期間で使用されたと考えられています。

甲州勤番支配所によって鋳造されたとされ、幕府の正式な認可を得ていない「私鋳貨幣(しちゅうかへい)」の一例とされています。
甲州朱中金の価値・相場価格はどのくらい?
甲州朱中金は現存数がごくわずかであるため、市場に出回ることは非常に稀です。
そのため、価格は高額になりやすく、状態によって以下のような相場が想定されます:
- 並品(やや摩耗あり):50万円〜80万円前後
- 美品〜極美品:100万円〜180万円程度
- 希少な鑑定済品・完品:200万円を超える場合もあり

専門オークションや古銭商の非公開リストで取り扱われることが多く、価値の見極めにはプロによる鑑定が不可欠です。
甲州朱中金が鋳造された時代と歴史的背景
甲州朱中金が作られたのは江戸時代後期の天保年間(1830〜1844年)前後と推定されています。
天保の改革をはじめとする幕政の混乱や、貨幣不足が地方にも波及し、甲府地域では独自に貨幣を鋳造する必要性が生じました。

このような背景から、甲州朱中金は短期間のみ流通したと考えられており、まさに「幻の金貨」と言える存在です。
甲州朱中金の素材・材質について
甲州朱中金の材質は、金を主体とする合金です。
純金ではなく、銀や銅を混ぜて硬度や耐久性を高めている点が特徴で、当時の地方貨幣に共通する特徴でもあります。

表面は金色に輝くものの、含有率は幕府鋳造の金貨に比べてやや低く、実用性を重視した仕上がりとなっています。
甲州朱中金の大きさ・重さとは?
甲州朱中金は、縦約13mm・横約9mmほどの小型な長方形で、いわゆる「豆板金(まめいたきん)」の形状に分類されます。重さはおよそ1.2g〜1.6g程度とされ、持ち運びに便利な実用通貨でした。

このサイズ感は、甲州地方で発行された他の朱金シリーズとも共通しており、シリーズ性がうかがえます。
甲州朱中金の含有金量・品位について
正確な品位は現存数の少なさから明確ではありませんが、金の含有率は約55〜65%(K13〜K15程度)と推定されています。
これは幕府発行の一分判や一朱金に比べるとやや低く、地方財政の厳しさを反映しています。

また、個体によって含有率に差があることも多く、鑑定機関での精密検査が求められるケースもあります。
甲州朱中金の特徴と見分け方のポイント
- 小型で長方形の形状:豆板金タイプで、判金とは異なる独特のフォルム
- 刻印が手彫り:「甲」や「中金」などの文字が鋭利に彫られており、個体ごとの差異がある
- 希少性が非常に高い:出土例・発見例が少なく、古銭界でもほとんど現物を見られない
- 模造品の存在:一部で贋作も出回っているため、鑑定書付きの個体が推奨される
- 地方経済の歴史を物語る:幕府とは異なる貨幣政策の証として、学術的にも価値が高い
まとめ:甲州朱中金の魅力と個人的な感想
甲州朱中金は、その希少性と歴史的価値から、非常に魅力的な古銭です。
単なる通貨としての側面だけでなく、当時の地方行政や経済事情を垣間見ることができる資料でもあります。
個人的には、こうした地方貨幣の存在が、江戸時代の多様性や柔軟性を示している点に強く惹かれます。もし実物を見る機会があれば、その小さな一枚に込められた歴史の重みを感じてみてください。
※本記事は2025年時点の情報を基に執筆しています。価格や鑑定については最新の情報をご確認ください。
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